こんにちは!副業兼業ニュースです。
気温もすっかり下がり、肌寒い日々が続いています。
台風も接近しているようですので、注意が必要ですね。
では、2020年9月28日週に発表された、働き方に関するニュースをお知らせします。
当週(2020/09/28-10/04)のイチオシニュース
・副業先の残業時間を事前申告する新ルールが9月スタート。働く人への影響は?副業を報告しなかった場合はどうなる?
・日本一人口が少ない鳥取県で進む「都市部副業・兼業人材」の活用
・注目集める保険外看護 副業で収入増、看護師のニーズつかむ
副業先の残業時間を事前申告する新ルールが9月スタート。働く人への影響は?副業を報告しなかった場合はどうなる?
厚生労働省が、副業をする人の残業時間について、勤務先に事前申告する新ルールを2020年9月から開始した。
具体的には、申告に基づいて本業と副業の労働時間を合算し、本業先・副業先それぞれにおいて、時間外労働の上限を超えないように義務づけるというルールだ。
昨今、「副業でスキルアップしたい・収入アップしたい」という人が増加している。
一方で、未だ副業解禁に慎重な企業は多く、副業をする人の割合は少数にとどまる。
今回の指針を受けて、私たちの働き方は今後どう変化するだろうか。
新ルール制定における背景、副業を行う上で企業側・労働者側、それぞれが気を付けるべきポイントについて、社会保険労務士の鈴木圭史さんに聞いた。
Q:今回、副業に関する労働時間の申告について、新たにルールが追加されたことにはどのような狙いがある?
A:副業希望者が増加する中、日本で副業がなかなか普及しなかった理由の一つに、企業側の「労働時間の把握が難しく、長時間労働を助長する」という意見があった。
そのため、副業解禁に慎重な姿勢をとっている企業は現在も多い。
そこで、企業側が従業員の労働時間を管理しやすくするために、「労働者本人が本業と副業の労働時間を申告する」という新たな指針を加えた。
そうすることで、「副業先での労働時間が把握しづらい」という企業側の問題が解消され、従業員の副業が認められやすくなることが狙いだ。
Q:新ルールは、具体的にどのような内容?
A: 本業と副業の労働時間を合算し、労働者が事前に時間外労働の上限を勤務先に自己申告する。
具体的には下記の通り。
・時間外労働の上限規制(月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内)の範囲で、労働者は事前に本業と副業の勤務先に時間外労働の上限を申告。
・例えば、労働者が時間外労働を1カ月あたり60時間と設定した場合、本業で40時間、副業で20時間などと決めて、それぞれの勤務先に申告。
・両社は自社に対して申告された上限を守れば、相手先の残業時間が上限を超えても責任を問われない。
Q:副業の勤務時間は「時間外労働」という扱いになる?
A: 労働基準法では、法定労働時間(原則1日8時間)を超える時間外労働には、割増賃金を支払わなければならないと規定されている。
つまり、本業で週40時間働いた場合、それ以外の労働時間はすべて時間外労働扱いになり、25%の割増賃金となる。
その時間外割増賃金の支払い義務は、原則、後から労働契約を締結した事業者側にある。
すなわち、副業先での勤務は時間外労働になりやすく、割増賃金となる可能性も高くなるということだ。
Q:今年9月1日には、「労働者災害補償保険法」も改正された。副業をしている人にどのような影響がある?
A: これまでは、複数の企業で働いている労働者の場合、労働災害が発生した職場のみの業務上の負荷を評価して労災認定が判断されていた。
しかし、9月1日以降は「全ての就業先の賃金額を合算した額」をもとに保険給付額が決定されることになった。
ただし、副業先とも雇用契約を結んでいて、雇用保険が適用される働き方であることが条件となる。
Q:副業を行うにあたって、労働者が気を付けるべきことは?
A: ガイドラインには「労働者の留意点」として、下記の内容が挙げられている。
① 就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要。
② 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要。
③ 1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要。
参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2020年9月改定)
その他、副業の年収が20万円超えた場合、税金の納付義務が発生するため、労働者は確定申告をする必要がある。
20万円超の収入があるにもかかわらず、確定申告を行わなかった場合、追徴課税などの罰則があるため注意が必要だ。
一方、副業の種類によっては、所得税が源泉徴収されているケースもあるため、その場合は確定申告をすれば税金が戻ってくる可能性がある。
Q:労働者が勤務先に副業を報告しなかった場合どうなる?
A: 就業規則で副業が禁止となっている場合は、当たり前だが職務規定違反となる。
また、副業が認められていても、所定の手続きを取らずに副業が発覚した場合、
内容に問題がなくても、就業規則違反で処分が下る可能性もある。
まずは一度、勤務先の就業規則を確認する必要がある。
最近では、クラウドソーシングなど単発の仕事を受注する人が増えているが、たとえ直接雇用の仕事ではなくとも、報告を義務付けている会社は多いはずだ。
また、ケガや病気などで労災判定が下りた場合、先述の通り9月からは全就業先の賃金額をもとに保険給付額が算定されるが、副業を内緒で行っていると、休業補償が本業の賃金額分しか算定されないことになってしまう。
Q:新ルールの普及により労働時間の明確化が期待されるが、労働者の自己申告にのみ委ねられているという点では不安もある。現時点で考えられる問題点は?
A: 労働者が収入を増やそうと長時間働き、上限規制にかからないよう、実際に働いた時間を過少に申告するということが想定される。
その問題に対処するため、企業側は面談などで従業員の健康管理を徹底する必要がある。
また、時間外労働に対して会社は25%の割増賃金を払う義務があるが、副業先が割増賃金の支払いを避けるために、労働者に対し、業務委託などの働き方を提案する可能性もある。
業務委託の場合、直接雇用契約ではないため、最低賃金も雇用保険も適用されない働き方となってしまう。
労働者側も、割増賃金になると副業先に雇ってもらえないと考え、必要な申告をしなくなることが予測される。
労働者自身も、不利益となる働き方を選ばないよう、十分に注意する必要がある。
Q:副業を推進する上で、企業側は今後どのようなことに気を付けていくべき?
A: 企業側が副業を認めることで、従業員のスキル向上や人脈拡大といったメリットが見込める一方、自社の機密事項が流出するというリスクもある。
従業員に対して、業務上秘密となる情報の範囲や、業務上の秘密を漏洩させないよう注意喚起を徹底し、秘密保持や競業避止に関する誓約書を提出させることも検討すべきだ。
副業で一定額の収入を超えると確定申告の義務が発生するため、今後は税務面に関する社員教育も必要になりそうだ。
最後に、副業の実態として、残業手当が減って生活が成り立たなくなった人が、生活費を補うために副業せざるを得ないというケースが少なくない。
労働者が不安定な働き方に陥らないよう、企業側は賃金体系の見直しや生産性を上げる努力も必要になる。
長時間労働を防ぐために、副業をする従業員の健康チェックや面談など、管理体制を強化していくことも重要だ。
関連リンク 副業先の残業時間を事前申告する新ルールが9月スタート。働く人への影響は?副業を報告しなかった場合はどうなる?
日本一人口が少ない鳥取県で進む「都市部副業・兼業人材」の活用
副業、兼業、リモートワーク。
以前から注目を浴びていた働き方の変化は、コロナ禍で否応なく進んでいる。
鳥取県は、副業や兼業、そしてリモートワークを活用し、地域企業の人材不足解消に取り組んできた。
10月3日(土)放送の『羽田土曜会』では鳥取県の平井伸治知事をゲストに迎え、都市部人材の活躍に迫った。
◆都市部にいる副業・兼業人材を積極採用
鳥取県は日本一人口が少ない県で、地域企業の人材不足という問題を抱えている。
そこで県が取り組んだのが、都市部にいる副業・兼業人材たちと鳥取の地域企業とのマッチングだ。
2019年には東京で「地方創生!副業兼業サミット」を開催した。
さらに鳥取の地域企業を実際に訪問し、直接経営者の経営課題をヒアリングする「鳥取企業スタディツアー」も実施した。
平井知事によれば、昨年募集した副業・兼業人材14人に対して1400人の応募があったという。
今年9月にもオンラインで「副業兼業サミット〜週1で地方企業の副社長になる〜」を開催し、全国各地から500人が参加した。
◆都心からの人材で県に新たな風
実際、採用した企業はどうか。
鳥取名物のらっきょうと漬物の販売を行っている「泊綜合食品」は商品開発に経営課題があった。
そこで採用したのが、都内の大手食品会社やPR会社で商品開発や広報を担当した副業・兼業人材の柴山紀子さん。
現在、冬に発売する新商品の開発に携わっているが、「泊綜合食品」取締役の岸田いずみさんは「これまで柴山さんが築いてきた人脈、マーケティングの知識がいま商品開発に結びついています」と語る。
自動車部品関連の組み立てロボットを製作する「エイブル精機」は社員が指示を待たずに自ら動けるようにマインドチェンジを行いたいと考えていた。
この経営課題を解決するために採用されたのが石川貞康さん。
都内の大手電気機器メーカーで技術開発職として勤務し、定年退職後はフリーランスでコンサルティングに携わってきた。
意識改革のため、石川さんが提案したのは「5S」。
整理、整頓、清掃、清潔、しつけの徹底だ。
一見すると人材育成には関係ないように見える「5S」だが、「エイブル精機」では5Sに取り組んだことで共通の工具を写真が一箇所に集め、結果として会社全体の効率化につながった。
石川さんも「企業の文化にどう自分の経験を浸透させていくか。少しずつ変化しているのも実感できるようになった」と話す。
山陰地方の戸建住宅などを請け負うアート建工では、企業ブランディングの構築やクオリティチェックに課題を持っており、クリエイティブ領域に副業・兼業人材の活躍に期待を寄せている。
同社の新規事業に関わっているのが「AOI Pro.」執行役員でプロデューサーの神吉康太さん。
CM制作を通してプロジェクトマネジメントに関わってきた。
神吉さんが取り組んだのは、ブランディングにコピーライターに参加してもらい、大谷社長の言葉をブラッシングすることだった。
CMなどに携わっていなければなかなか出ない発想で「一流のノウハウを地方に持ってきてもらい、みんな勉強になっている」と大谷社長は話す。
◆仕事とは自己実現の源
神吉さんは「AOI Pro.」執行役員でもある。
送り出す側の同社CEOの中江康人は「タレントがある人はその才能を欲しいと思っている企業さんがあるわけだから、個人が持っている能力をより多くの企業と社会に提供したほうがいいと思っている」と副業・兼業を好意的に受け止めている。
平井知事は都市部人材の活躍について、ピーター・ドラッガーの言葉を引用し次のように語る。
「東京から来ていただいて四六時中でなくてもけっこうだからアドバイザリー、またスタッフとしてやっていただく。いわば副社長になっていただく。鳥取の経営者の方も実際に面接をしていただいて、『この人素晴らしいな』という人材を一本釣りした形。出られる方々もそれぞれ思いをもって入っていただいている。いわば自己実現をされている。ドラッカーも言ってましたが『仕事とは自己実現の源である』。その言葉通りだと思います」
他県に先駆けて、新たな働き方に取り組んでいる鳥取県。
日本の未来は日本一人口が少ないこの県にあるのかもしれない。
関連リンク 日本一人口が少ない鳥取県で進む「都市部副業・兼業人材」の活用
注目集める保険外看護 副業で収入増、看護師のニーズつかむ
新型コロナウイルスの影響による病院の経営悪化を背景に、看護師の「副業」が注目を集めている。
県看護協会によると、感染を心配した受診控えなどで、陽性患者を受け入れていない病院や診療所も減収となり、県内の民間病院で看護師の夏のボーナスを引き下げたという報告もあるという。
成田康子会長(62)は「夏は出せたが冬は減らすと言われた看護師もいる」と話す。
そんな中、看護師の登録数を増やしているのが、公的医療保険や介護保険の対象外の「保険外看護サービス」の仲介業を7月から始めた、姫路市立町の人材サービス会社「スーパー4」だ。
「収入や仕事の幅を確保したい」という看護師のニーズをつかみ、登録者数を伸ばしている。
看護師による外出付き添いは、原則保険の対象外で、訪問看護も回数や時間に制限がある。
保険外看護は、利用者の経済力に左右される課題があるが、看護師側は高収入を得られる可能性もある。
当サービスは、通院や旅行、結婚式への付き添いなどの依頼に対し、5年以上の勤務経験がある看護師を経歴や得意分野に応じてマッチングする仕組みだ。
利用料金は1時間当たり一律8千円で、更に医師の指示書を事前に共有すれば、点滴や注射、投薬などの医療行為も可能となる。
これまでに大阪を中心に、20~60代の看護師140人以上の登録があった。
「学費や仕送りの足しになれば」。
7月に登録した神戸市須磨区の女性(53)は、大学生と大学院生の息子2人がいるシングルマザーだ。
精神科の民間病院に勤めているが、入院患者の面会制限で家族への連絡や荷物の受け渡しが増え、忙しくなった。
「患者さんの希望に寄り添える保険外看護は魅力的。冬のボーナス以降の心配もあるので、単発の仕事があれば引き受けたい」と話す。
県内の登録者は31人、姫路市内は3人で、結婚や育児などで離職している「潜在看護師」も多いという。
同社の事業責任者で看護師の渡邊江梨香さん(36)は、「看護師は病院や診療所に勤める働き方が主流。仕事の時間や場所を自分で選べる『フリーランス』という選択肢を広めていきたい」と話す。