TOP > 働き方 > 企業対応どこまで?同一労働同一賃金の導入
2018-07-22 07:07

働き方

企業対応どこまで?同一労働同一賃金の導入

正社員と非正規との待遇格差をめぐる注目の最高裁判決から

国が推進する「働き方改革」の中では、非正規労働者の待遇改善も主要テーマとなっており、2016年12月には、「同一労働同一賃金ガイドライン案」が提示されている。これに関連し、このほど正社員との間の待遇格差是非を問うた2件について、注目の最高裁判決が出された。

厚生労働省も、近くこの判決趣旨を同ガイドラインに反映させるべく、議論を始めるとみられている。「同一労働同一賃金」の導入で、実務にはどのような影響があるのか、企業はどういった対応を求められるのか、予測される動向などをまとめたい。

現行の労働契約法第20条やパートタイム労働法第8条によっても、正社員として雇用している無期契約労働者と、非正規労働者であるパートや契約社員などの有期契約労働者との間で、仕事内容や責任も同じであるにもかかわらず、不合理に賃金や福利厚生など労働条件における違いを設けることは禁じられている。しかし、実際には待遇差が存在するケースは少なくなく、またそれを当たり前と受け止めてきた社会背景もある。

働き方改革では、こうした状況に本格的なメスを入れる方針で、「同一労働同一賃金ガイドライン案」では、正社員と非正規労働者との間にある基本給や福利厚生、各種手当などについて、その差が問題となるかならないか、典型的な具体事例を挙げながら細かく示し、企業に適切な対応をとるよう求めている。

ハマキョウレックス事件のケース

さて、2件の訴訟に対する最高裁の判断だが、ひとつずつみていくこととしよう。1件目の「ハマキョウレックス事件」では、物流会社に勤務する契約社員ドライバーと、正社員ドライバーの労働条件における相違に関し、労働契約法第20条の解釈が問われた。

訴訟内容は、契約社員ドライバーが、正社員にのみ支給される賞与、退職金、通勤手当、無事故手当、作業手当、家族手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当などについて、本来ならば自ららにもこれらを受け取る正社員と同一の権利があることの確認と、支給されていない各手当の差額支払い(損害賠償等での支払い)を求めたものである。

最高裁はこれに対し、労働契約法第20条の趣旨は、業務の内容や責任、配置変更の範囲やその他事由を考慮しても、有期契約の労働者と無期契約の労働者における取り扱いの相違が不合理と認められるものであってはならないとするもので、それぞれの労働者間で職務内容等に応じ、バランスのとれた処遇を求めていると判示、正社員との比較については、比較対象の無期契約労働者と同一の労働条件になるものでないとして、賃金差額ではなく損害賠償を認めた。

各種手当については、それぞれに性質や内容が具体的に検討され、通勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当については、待遇差を不合理とした二審判決を支持、さらに二審では認められなかった皆勤手当についても、不合理な待遇差にあたるとし、同条の違反との判断で損害賠償を認めている。一方、住宅手当については、契約社員の場合、転居を伴う配置転換が予定されていないことから不合理ではないとした。

長澤運輸事件のケース

2件目の事案は、定年退職後に再雇用された有期雇用の嘱託社員について、定年前との待遇差を問うた「長澤運輸事件」だ。運送会社で、高年齢者雇用安定法に基づき、再雇用となった嘱託社員ドライバー3名が、定年前と同様の業務に従事しているにもかかわらず、労働条件が異なるものとなり、不合理な待遇差があるとして損害賠償を求めた。

正社員と、定年退職後のシニア再雇用による嘱託社員との間の給与体系や手当、賞与に関する待遇差が、労働契約法第20条の不合理な待遇差にあたるかが問題となったが、最高裁はこれに対し、定年後の再雇用は同条で格差の不合理性における判断基準要素となる「職務の内容」、「職務内容と配置の変更の範囲」、「その他の事情」のうち、「その他の事情」にあたると判断。有期契約と無期契約の賃金差が不合理か否かは、賃金総額の比較ではなく、各賃金項目の趣旨を鑑み、個別に判断すべきものとした。

そのうえで今回のケースについては、基本給と賞与について、定年後再雇用であり、退職金が支払われたことや、老齢厚生年金受給が予定されており労使交渉で支給まではその調整給が支払われること、嘱託社員年収は定年前の79%弱が想定され賃金体系が収入の安定に配慮しつつ成果も反映されるよう工夫されていることなどから、支給に差があるのは不合理でないと結論づけた。

一方で精勤手当については、その趣旨からして精勤手当を嘱託社員に支給しないことは不合理と認め、損害賠償等の支払い義務があるとしている。

判断のポイントと今後求められる対応

最高裁は今回の判決で、正社員と非正規労働者の間にある労働条件の差について、賃金総額を比較することのみによらず、各賃金項目の趣旨を個別に考慮して判断すべきとした。この考え方は、同一労働同一賃金ガイドライン案の姿勢とも一致する。

手当などについて具体的に考えると、危険手当や作業手当のような業務内容に基づいて、その負荷を填補することを趣旨としたものは、同じ業務を行う限り、正社員と非正規労働者で必要性に違いがあるとは考えにくいため、不支給は不合理となる可能性が高い。

精勤手当、皆勤手当も同様で、奨励の必要性は契約形態で違うとはいえず、長澤運輸事件の例のように、不支給が不合理と判断されるだろう。

一方、地域手当や住宅手当については、非正規労働者における転居、転勤の見込み、採用地・勤務地の限定状況などで、正社員との違いを合理的に説明できる場合、不支給が認められると考えられる。だが逆に必要性の差を説明できない場合など、ケースによっては、こちらも不支給が不合理と判断される可能性は残る。

定年退職後の再雇用に関しては、長澤運輸事件の例で、労働条件において考慮される要素であることが示されたため、正社員としての雇用時との差や、現正社員との待遇差も、一定の合理性をもって認められると考えられる。

しかし、もちろんすべての差が再雇用という理由によって是認されるわけではない。今後のガイドラインなどに含まれる内容をベースに、就業規則や賃金規定など明確なルール作りを行っていくことが雇用主・企業側には求められるだろう。

手当などに差を設ける場合、企業にはそれが合理的であることを示す説明責任が生じ、説明不可能であるような不合理な待遇差は無効であること、そして不法行為として損害賠償の対象になることなどが、今回の2件の最高裁判決から明らかとなった。

「同一労働同一賃金ガイドライン」や今後の法改正などで、正社員、非正規労働者という雇用形態の違いのみを理由とした、合理的説明のつかない待遇差の放置は、より厳しく取り扱われるものになると見込まれる。これを機に、労働条件の見直しや細かなルール策定の必要性も広がっていくだろう。

(画像は写真素材 足成より)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加